「離婚」にあたっての準備
(離婚協議書の作成や、離婚に関する契約公正証書)
「離婚」とは、パートナーとの今までの関係を解消し、それぞれが新しい人生を別々に
歩むことです。
ただ、今後新しい人生を別々に歩むにしても、今までのパートナーと共に築いてきたもの
を清算する必要がありますし、慰謝料の問題や住んでいた住居を今後はどうするのかという
問題もでてきます。離婚後の、お子さんの親権や養育費の問題も離婚前にきちんと決めて
おくことが、お子さんの今後の生活や教育のためにも大切なことです。
離婚を考えるにあたっては、まずは、これら離婚に伴って発生する様々な問題を、どちらの
パートナーが今後どう対応、責任を果たしていくのかを考えておく必要があります。
そして、これらを離婚するパートナーと決めた場合、その内容をきちんとした文書にして
おかないと、後に約束したはずのお金がもらえない、もらうために裁判を経なくてはならな
いといった事態も考えられます。
払う側にしても、確たる約束を決めておかないと、何度も多寡な要求を漫然と払って
いくことになってしまう可能性もあります。
離婚を考えているという場合、まずは以下のことを確認しましょう。
@ まずは、いま一度の熟考を!
「離婚」をしますと、今までのパートーナとは「赤の他人」。それぞれが別々の人生を歩む
ことになりますし、お互いに再婚する可能性もあります。お互いに今までの生活基盤が激変
しますし、お子さんの今後のこともあります。
本当に離婚しなくてはならないのか、離婚しか道はないのか、自分が本当に離婚を望んで
いるのか、以下の点も含め、まずは熟考、特にご自身の「心」も振り返ってみましょう。
・ 離婚を望むに至った「理由」
・ 関係の修復は今後お互いに不可能・見込みがないのか
・ 離婚をすることが、お子さんの今後にとってもベストな方法なのか
・ 離婚するにあたっての決意と今後の生活設計はどうか?
・ 離婚ではなくて、本当は関係の「改善・やり直し」を望んでいるのか?
※ 家庭裁判所における「調停」は、離婚に向けての調停だけではなく、関係の調整・改善に
よる「夫婦再出発」を目的とした、「円満(和合)調停」もあります。
A 「離婚」の方法
「離婚」には、以下、いくつかの方法があります。
・ 「協議離婚」(夫婦双方の合意により離婚する方法)
・ 「調停離婚」
・ 「審判離婚」
・ 「裁判離婚」
「協議離婚」は、夫婦双方の「合意」により離婚を決定し、そのまま離婚届を出すことで、
裁判所を通さないでするやり方です。
夫婦双方の合意があれば、「裁判離婚」と違い、離婚の「理由」は特に問われません。
この場合、子供の親権や金銭問題、養育費等、離婚にまつわる今後の「とりきめ」につい
ても、話しあって決めておく、文書にしておくことが大切です。
B お子さんはいらっしゃいますか?
離婚にあたっては、お子さんのことも考えておく必要があります。
(1) どちらが「親権」を持つのか
未成年のお子さんがいらっしゃる場合、離婚後、夫婦のどちらが子供の「親権」を持つ
のか決めておく必要があります。
離婚後の、子供の親権者が決まっていないと離婚をすることができません。
また、一度親権者を決めますと、離婚後親権者を勝手に替えることはできませんので注意!
(2) 「戸籍」について
結婚の際苗字が変わった側は、離婚後旧姓に苗字が戻りますし、パートナーの戸籍
からも脱けることになります。
(離婚後3か月以内に届出をすれば、結婚後の苗字を離婚後も名乗れます)
しかし、お子さんの苗字と戸籍については、離婚後も変わりません。子供の苗字も変えるに
は家裁の許可を得る必要がありますし、戸籍の変更についてはこの後「入籍届」をだす必要
があります。
(15歳以上のお子さんには、どちらの苗字にするか決める権利がありますので注意)
(3) 「養育費」について
たとえ離婚しても、親の子供に対する扶養義務は消えません。子供を育てていく側は、一方
パートナーに対し、子供の「養育費」を子供が成人するまで受け取る権利があります。
離婚に際しては、子供の「養育費」についても決めておくことが大切です。
養育費の額(子供の進学シーズンがきた時は何かともの入りです。この点も考えておきま
しょう)や支払方法、支払時期等、具体的に決めておきましょう。払う側にとっても、金額や
方法等をきちんと事前に決めておくことは今後において重要なことです。
(4) 「面会交渉権」について
親権を持っていない、離婚後子供と住んでいない一方パートナーには、子供と面会する権利
があります。
面会方法や時期、面会回数、面会の場所や親権者の同伴の有無、行事の際の対処等、
面会の条件や回数等について具体的に決めておくことが大切です。
C 「財産分与」の請求について
夫婦が婚姻中に築いた財産は、夫婦の共有財産。離婚後は、それぞれその財産を分与
、清算を請求する権利があります。
・ 「財産分与」は「慰謝料」ではありません。離婚原因を作った者でも、離婚について責任
がある者でも請求することができますし、「財産分与を受けた=慰謝料ももらった」という
ことは原則としてイコールではなく、両者は基本的には「別物」です。
・ 専業主婦の方、専業主夫の方も夫婦生活・家庭生活維持への貢献をしていますので、
離婚に際し「財産分与」を請求することができます。
・ 「財産分与請求」には「時効」があります。離婚から2年たつと原則としてタイムオーバー
ですので、離婚の際には、財産分与請求もしましょう。
・ 「財産分与請求」の対象となるのは、原則として結婚後、破綻前に夫婦で築いた財産です。
結婚前から各々持っていた財産や、婚姻中に相続や贈与で各々で取得した財産は
原則として、離婚による財産分与請求の対象外になります。
財産分与の対象になる財産なのかについて(あくまでも一例。各ケースごとに違いもありますので注意) |
現金・預貯金 (貯蓄型生命保険も含む) 分割対象 |
不動産(結婚後協力して得た不動産) 登記名義が片方の名義でも財産分与の対象 |
有価証券やゴルフ会員権、車 名義が片方の名義でも財産分与の対象 |
配偶者が経営している「会社」は対象外 所有株式は対象。設立時に出資している場合は対象 |
配偶者や配偶者親族の個人事業 手伝っている場合、収益が対象。無償労働分の賃金請求も可能 |
退職金 分割対象。厚生年金や共済年金も分割対象 |
結婚中の借金 配偶者の連帯保証人になっている場合は離婚後も保証債務負担 |
D 「慰謝料」の請求について
「慰謝料(解決金)」は、原則として離婚原因を作った者に対して、肉体的又は精神的苦
痛を受けた「損害」として請求するもので、「財産分与」とは別物です。
又、双方に離婚原因がある場合は、請求できない場合もありえますので注意。
※ 「慰謝料」が請求できるのは、原則として離婚から3年以内です。
E 外国人パートナーと結婚されている方へ
パートナーが外国人(日本国籍以外の国籍所持者)である場合も、夫婦の一方が、日本に
常時(5年以上が目安です)居所を持っている日本人である場合、離婚について日本の法律
も適用されます。
日本の法律が離婚に適用される場合、例えパートナーの国の法律では離婚が認められて
いなくても、日本においては離婚(協議離婚・調停離婚・審判離婚・裁判離婚)が可能です。
この場合、離婚に伴う財産分与や慰謝料も日本の法律によることになります。
ただ、これはあくまでも日本で離婚が認められるということであって、パートナーの国において
も自動的に離婚が認められるわけではありません。この点は、パートナーの国の法律により
ますので注意。
お子さんの国籍について
日本国籍を持っているお子さんについては、常時の居所が日本である場合、離婚後お子さ
んの親権者になる権利は、夫婦双方が持っています。
両親が離婚しても、お子さんが現在持っている日本国籍と外国籍(二重国籍)の有無は
変わりません。
F 「事実婚」カップルの方へ
事実婚カップル(婚姻はしていないけど夫婦同然の生活をしているカップル・内縁)の場合
でも、一方が突然関係を解消してきた場合は慰謝料が問題になる場合もあります。
また、事実婚カップルを解消する際も、離婚の場合のように、「財産分与」が問題になり
ますし、二人で築いた財産の清算・分配が必要になってきます。
ただ、婚姻をしていない以上、事実婚カップルの一方が死亡しても、もう一方のパートナーに
は、相続権はありません。
生前、故人との生活において得た財産で自分も資金の一部をだしている場合等、例外も
一部ありますが、パートナーの死後、その財産を「相続」する権利自体はありません。
事実婚カップルの方で、自分の死後、パートナーに財産を残したいという場合、遺言書を
書いておく必要があります。
遺言書について
相続について
慰謝料請求の内容証明について
以上はあくまでも、「外枠」です。夫婦や家庭が100あれば、
関係人を含め、100通り、200通り様々なケースがあります。
ご夫婦や家庭の関係や状況、今後のこと、お子さんのことを
含め、様々な状況がありますし、具体的に詰めるべき点も違っ
てきますのでご注意ください。
G 離婚に関するとりきめは「文書」にしましょう!
離婚における、財産分与や慰謝料請求、養育費や親権等、パートナー
との「とりきめ」は、口約束だけでは「言った、言わない」「知らない」の
水かけ論です。後で請求するのも、何の証拠もなければ大変なこと
です。必ずとりきめは「文書」にしておきましょう。
離婚における「とりきめ」は、公正証書にするのが一番ベストです。確たる証拠になりますし、
離婚後パートナーが約束を果たさない場合も、公正証書にし、さらに「一定の文言」も記載して
おけば裁判を経ることなく強制執行をかけることも可能になります。
ただ、公正証書は、相手の合意も必要ですし、相手がしぶる場合も考えられますので、この
場合でも、「離婚協議書」や「念書」だけは必ずとっておきましょう
これらの文書ですが、作成して内容を承諾し、サイン押印してしまうと、後にこれを争うこと
が大変になります。相手がこれらの文書を持ってきた場合も、必ず内容の意味を吟味し、
今後、どういうことになるのかよく理解した上で、サイン・押印することが大切です。
当事務所では、離婚における「離婚協議書」の作成や、「離婚に
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